シィカの言葉の宝石箱

大阪在住の女子大生。俳句や短歌などの詩歌が好きです。楽天ブックス「シィカのちょっと濡れる歌集」2021.5発売

くくしがるば

 

くくしがるば

くくしがるば

 

 

今は昔。
ちょうど三日前のことだった。有馬温泉駅前旅館皇女が寝耳に洪水でご懐妊なさったのは。
その知らせに、帝居は上を下へ、右分けを左分けへの大騒ぎとなった。
なにしろ天ヶ下に広く知られた、評判の皇女であったからだ。
どれほどの評判であったかというと、この皇女に対しては、誰しも顔を背けて歩くほどであった。老舗のレイバンがここでのご奉仕用に、視界が完全に暗黒となるサングラスを開発したというエピソードは有名だろう。もっとも、さすがにこのサングラスでは、道を歩くのもままならず、一人の侍女が誤って千尋の深さに及ぶという北東宮のかわやに転落してからは誰も使うものはなくなった。

 

 

 

 

いしづちたろう句集: kindle百句句集

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