シィカの言葉の宝石箱

大阪在住の女子大生。俳句や短歌などの詩歌が好きです。楽天ブックス「シィカのちょっと濡れる歌集」2021.5発売

シェイクスピア ソネット

 

 

 

 

 

わが詩神の舌は金しばり、つつましく沈黙しているが、

一方では、きみを称える文章が、修辞もはなやかに、

詩の女神ら総がかりで彫琢した奇妙な言葉をつらね、

黄金の筆をもって、つぎつぎに書きつづられてゆく。

ほかの詩人らは結構な言葉を書くが、私は良い思いをいだくだけ、

才人が洗練された筆をふるい、形をととのえ、磨きあげて、

きみにささげる賛美の歌のひとつひとつにも、

無学な教会書記よろしくアーメンと叫びつづけるだけだ。

きみがほめられるのを聞けば「さよう、まことに然り」と言って、

称讃の頂点に、また、何ほどかの称讃を加えてはみるが、

それは心のなかでのできごと。つまり、言葉では遅れをとっても、

心のなかでは、きみへの愛は先頭切っているのだ。

 だから、他人には雄弁のゆえに目をかけてやりたまえ。

 そして私には、喋っているのも同じ沈黙ゆえに。

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