シェイクスピア ソネット
星まわりにめぐまれた人たちには、
公けの栄誉や、はなやかな肩書を自慢させておけ。
私は運命のめぐりあわせで、さような栄達とは無縁だが、
思いがけなくも最高の栄光を受容している。
偉大な王族の寵臣たちが美しい葉をひろげるのは、
太陽の日ざしをあびた金盞花のようなものにすぎない。
いずれは、そのはなやかな姿も隠れ埋もれてしまう。
玉顔くもれば栄光のさなかにいても没落するのだから。
武勲のほまれたかい老練な戦士が、
百千の勝利をおさめたあとで、一度でも敗北すると、
完全に栄誉の序列からはずされて、
肉体の仕事はおわったのに、心がはたらきだす。
つまり、私の心はいまいる場所をはなれて、
ご熱心にも、きみのもとへ巡礼の旅にでかけるのだ。
私の思いは、たれさがる目蓋を大きく見ひらかせて、
亡者の見るがごとき真暗闇を見つめさせる。
ただ、わが魂のつくりだす架空の視力が、この
見えぬ眼にきみの姿を浮きあがらせてくれるのだ。
それは、おそろしい夜のなかに宝石のように浮かび、
黒い夜を美人に変え、その老いた顔を若がえさせる。
なんと、こうして、昼は旅のために手足が安まらず、
夜はきみを思って心が安まらぬしまつだ。